欧州次期排ガス規制「EURO7」
内燃機関車はこれから存続できるかに関しては、「EURO7」はキーポイントとなると考えております。歴史上もっとも厳しい排気ガス規制を導入することは、「Fit for 55」に対して内燃機関車の最終的な答えとなるであろう。欧州諸国の政府とお客様はこの答えをどのように受け止めるかは今後(2035年以降)内燃機関車が欧州市場に残してよいか最後の判断になるかもしれないです。ノルウェーをはじめ、スウェーデン、英国、フランスなど各国ともエンジン車の販売禁止の日程案を発表しています。2021年11月には国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP 26)が開催され、30カ国が2040年までに内燃機関車を禁止する宣言に署名しました。エンジン車禁止を支持する最大な理由は、CO2排出と有害ガス(一酸化炭素、窒素酸化物(NOx)、PM2.5)の問題でした。心理的に、数年前にあったディーゼルゲートでは政府とお客様とも内燃機関車の排ガス取り組みに対する信頼度を損ねたと言えると思っております。
「EURO7」の導入は2026~2027年以降になる見込みで、現在CLOVE(Consortium for ultra LOw Vehicle Emissions)というコンソーシウムにより検討されていて、一部の内容はわかってきています。弊社はその動きに対して下記ポイントに最も気になっていました。
・RDE(Real Driving Emissions)にショートトリップの織り込み
ショートトリップにはコールドスタートが含まれています。触媒温度が低い状態からエンジン始動すると、触媒はしばらくの間に活性化しておらず、浄化性能低下の状態で厳しい排出ガス規制値にクリアすることが非ハイブリッド車、ターボエンジン車にとって課題にになります。ハイブリッド車はモータアシストまたはモーター起動で回避できるか、EVモードの長時間によって、触媒温度が走行中冷やされて、再始動時は触媒温度が低下してしまう別課題を抱えています。
・規制対象物の拡大
新たにアンモニア(NH3)、メタン(CH4)、二酸化窒素(NO2),ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH3CHO)、亜酸化窒素(N2O)が追加される可能性が見えています。現行の後処理装置は全部の規制対象物をカバーできないし、厳格化した規制値をクリアできない課題があると考察しています。
・OBM(On Board Monitoring)の義務化
すべての車両はライフサイクルで全ての運転条件において、リアルタイムに排ガスが目標以内に収まっているかどうかをモニタリングして監視されています。リアルワールド、ライフサイクル、すべての車両というキーワードはいずれも排気設計に対し極めて困難な要件となります。車載型排気ガス計測装置さえエンジニアにとって想像を超えた難しいデバイス開発に決まっています。
ガソリンエンジン車はほぼ無理、ディーゼルは?
※こちらの議論で純粋の内燃機関車に限定、HEV、PHEVは除き
今年2月日本国内のある自動車メーカー4半期決算発表会で突然「ガソリンエンジンの新開発を欧州で行わない」と語りました。理由は言うまでもなく、EURO7の排ガス規制が厳しすぎて、クリアに払う必要な対価が重すぎるとなると思っております。ガソリンエンジンはCO2規制クリアだけでいっぱいいっぱいですが、排気ガス規制に加えると諦めるしかないです。複雑で沢山の排気ガス浄化装置を新規開発するよりは、リソースを方向性が正しい電動車に集中したほうが英断だと思っております。
一方、一時欧州では大ブームしたディーゼルエンジン車ではどうなるでしょうか、生き残るチャンスがあるでしょうか。私はディーゼル車はまた生き延びるチャンスがあると考えております、ただ、生存空間が確実に狭いです。時間も厳しくて、2026年までにほんの少しの3年半しか残っていないですね。
ディーゼルエンジンの排気成分は一酸化炭素(高温燃焼)、炭化水素(燃焼不十分)、窒素酸化物(>2000Kの燃焼温度で生成される)、PM(酸素不足、燃料の不純物)などに構成されています。2000年Euro3からディーゼルの各種排排気成分の規制が始まり、排気処理に関する準備は非常に整えています、ある程度慣れている状況です。燃料と空気の充分混合と燃焼温度の高温抑制によって窒素参加物とPMの改善効果が大きいです。そして、後処理において各種技術手段が確立されています。
後処理技術 | 処理・浄化対象 | 概要 |
DPF(Diesel Particulate Filter) | PM | セラミックフィルターによってPM粒子を塞き止めて捕集する |
アンモニア選択還元型NOx触媒(SCR触媒) | NOx | 尿素水(AdBlue)を触媒上流に噴射してアンモニアを生成してNOxと還元反応を発生させてNOxを除去する |
DOC(Diesel Oxidation Catalyst) | HC, CO,PM | 触媒の促進作用によって排気ガスと残存の酸素の酸化反応をさせる |
Lean NOx Trap(NOx吸蔵還元) | NOx | 空燃比リーン時(酸化過剰雰囲気下)にNOxを吸蔵し、リッチにして吸蔵されたNOxを還元・浄化する |
ディーゼルエンジンはEuro7に対しても、燃料充分混合(燃料微粒化、超高圧コーモンレール)と低温燃焼技術(EGR、ITリタード、パイロット噴射など)の徹底適用によって排気ガスの排出をさらなる低減し、および後処理装置の低温活性化するという組技で、既存技術をもとに最適化なシステム設計によって規制値をクリアする可能性があると考えております。
Euro7と向き合うためにケアすべき後処理装置の熱課題とは
・ライフサイクルにわたってDPFの再生を守れる温度管理
DPF再生時にDPF温度が許容温度を超えて、寿命が短縮したり、破損する懸念がある。一方でDPF再生時にDPF温度が閾値以下になると、再生が不十分になり、捕集率が低下してしまう問題が起きる。そのために、市場にあり得る使い方に応じて一番のシビアシーンを抽出し、目標温度レンジ以内にDPF温度を管理しないといけないです。
・尿素水SCR触媒での低温解凍と定期昇温
極低温時に尿素水が凍結してしまい、噴射不可の状態になるため、効率よく迅速に尿素水を温める必要がある。一方で、HC被毒解消のために、SCR触媒を定期的に昇温させる必要もあります。
・排気温度低下による尿素水結晶化の防止
SCR触媒上流側の排気ガス温度が目標温度以下(-11℃以下)にならないように、ガス温度を管理する必要があります。
・SCRFシステム化に伴う熱害問題
SCRFシステムはエンジンルームに集約されており、排気系から熱害を受けないように、遮熱または水冷設計を取ることでSCRFシステムの過昇温を防ぐ必要があります。
・ Lean NOx Trapの寿命延長および硫黄被毒解消のための温度管理
NOx吸蔵還元触媒の寿命は温度に敏感しており、適切な温度レンジ範囲内に抑えるように上流のガス温度管理する必要があります。ここでは、LNTにおける吸蔵と還元のタイミングを計って定期的に排気温度を緻密に制御する必要があります。
排気ガスに含まれている硫化酸素もNOx 吸蔵剤に吸蔵されているため、長時間にわたって硫化酸素の吸蔵量が増えすぎると、NOxの吸蔵力が減り、浄化能力が損ねてしまいます。 硫黄被毒解消のために、周期的に排気温度を600℃以上に上昇させて脱硫処理を行う必要があります。
エンジンシステム設計に高速3D熱シミュレーションの活用
TAIThermは排気系熱解析専用モジュールを搭載しており、高速かつ高精度的にディーゼルのエンジンおよび排気後処理の熱解析を包括的にモデリング・シミュレーションを行うことができます。
解析に必要な入力情報として、エンジン回転スピード、エキマニの入口ガス温度、排気ガス流量などが必要です。上記熱課題の解決に不可欠な時々刻々のガス温度、触媒温度などをシミュレーションで確認することができます。
さらにCoTherm連成プラットフォームにおいて、後処理装置における化学反応を表現する1Dモデル、エンジン制御ロジックを組み込みした1Dシステム制御モデルと連成して、より高度な熱シミュレーションを実現できます。